1977年作品というが、このポジティブで親しみの持てる作風は、今読んでも驚くほどギャップ感がほとんど無い。人物のビジュアル、特に男子キャラ、ストーリー展開のテンポなどの表現方法に、僅かに時代を感じさせるだけ。
当時、爽やかな空気を持ち込んだであろう忠津先生は、読後の駆け抜け感もまた凄い。
その後はご想像にお任せします、のスタイルがドラマの在り方として、一種の美学があるのだ。
今の世の中、読者が作り手にあれからみんなはどうなったのか、どうしているのか、を求める気持ちが強すぎて、このさっぱりとした読み終わりがなかなかさせてもらえない。後日談を全て要らないというのでなく、こういうストーリーの組み立てを許す余地が減っているから、多様な広がりを夢想して楽しむことがしづらい話が増えた。逆に語りすぎない結末に、消化不良を起こす読み手が増えている、というべきなのか?
いずれにせよ、忠津先生は絵のキュートさもピカ一でありながら、設定や展開の斬新さ、先を予想させにくいストーリーで、ワクワク感が途切れない。気を持たせる時間稼ぎ場面ナシ、停滞や鬱々無縁でカラッとしてパワーもある。此処に収録のものに限らず、どの作品読んでも気持ちよく読み進められるので、精神の健康が増す気がしてくる。全体、統一されたセンスで整っている。
「満月城へようこそ」74頁 人外登場。
「拝啓 兄上さま」41頁 兄の庇護。
「危険な関係」50頁 タイトルから発想を広げられるコメディ。
「雪の降る日は」30頁 親を見て子は育つ。
各作品名自然に確かに内容を語っている。