稲盛和夫と中村天風―一度限りの人生、生き方、自分流
一冊で見つけ出す、稲盛和夫の秘めたる哲学
出家を決めた名経営者、稲盛和夫。その裏には心の師・中村天風の哲学があった。
ピンチをチャンスに変え、挫折をバネに壁を破る!
稲盛和夫の「心の経営」、積極思考の秘密を、中村天風の発想を軸に解き明かす。
稲盛和夫の生き方と経営、その哲学を知ろうとするとき、私たちは中村天風という大きな存在を避けて通るわけにはいかない。天風をより深く学ぶことによって、稲盛の哲学は私たちにとってより生き生きとしたものになるだろうし、よりよく理解できることだろう。
そしておそらく、稲盛を通すことによって、天風の遺した言葉、哲学はより実感をもった、生き生きとしたものとして、理解することができるようになるのではないか。盛和塾に関わり、天風の流れをひく私が、あえてこの偉大すぎる二人の師を描き、探り、学んでみたいと考えたのはそのためである。
バブルに惑わされることなく正業を貫き、長く低迷する不況のなかで絶えざる努力によって正当な利益を上げ続ける。稲盛和夫の経営と生き方は、現代を生きるビジネスマンに、多くの貴重な示唆をはらんでいる。この、逆境にもめげず、ピンチを逆にチャンスに変えていく逞しさ、そして他人の目や世間の常識にとらわれない積極的で自由な生き方を、ここで天風の光を当てることによって、より深く理解したいと思う。
本書「はじめに」より
(本書は1999/7/1にプレジデント社より刊行された書籍を電子化したものです)
目次
プロローグ──「自分流」の生き方
稲盛 天風の心を知る
稲盛の「心の経営」に天風の光を
第一章 DDIの挑戦──稲盛はいかに壁を乗り越えたか
巨象に挑む小犬
新電電は、新しい時代が求める事業である
葛藤し、自問する稲盛
「動機善なりや、私心なかりしか」
人生は一度限り
大きな存在が力を
通信回線を、どう敷くのか!?
真藤・北原の「救いの手」
ピンチこそチャンス
闘いの第二幕
心の切り換えが逆転ホームランを生む
衛星携帯電話で地球上をつなぐ
成功を実現するための十二ヵ条
願望を心に燃やし続ける
カラーで、リアルに見えてくる
第二章 挫折が育てたベンチャー魂
二十代で名経営者の片鱗を
団交から学んだ教訓
「敬天愛人」西郷と稲盛
故郷の大きな景色
ガキ大将のリーダーシップ
受験は失敗、そして肺結核
不運は成長の糧である
行商に出た稲盛少年
受験、就職で相次ぐ挫折
積極精神に転じてチャンスをつかむ
スト破りで会社の信用を守る
男が会社を辞めるとき、会社を興すとき
第三章 起業と成長、成功を確実にする経営哲学
町工場から世界的企業へ
起業を成功に導くプラス思考
会社にも「行動原則」を
フィロソフィなき企業の悲惨
一日一日を懸命に
「下請けイジメは愛のムチ」
嘘から出た独自技術
独自の技術、独立した立場
単品生産で得意技をつかめ
何ももたないから、創意工夫が
柔軟思考が生む技術開発力
多角化はリスク軽減になるか
得意技の延長上に多角化を
「飛び石」を打ち、広げ、つなぐ
利益を最大にする会計学
第四章 危機を克服し、奇跡を起こす「心の経営」
経常利益一〇%への「思い」
松下幸之助の「ダム式経営法」
再起のバネは、感謝の心
稲盛を一回り成長させた「事件」
「災難は生きている証拠ですよ」
苦境で、悩みすぎない
不運は反省と飛躍のチャンス
立ち直り方が成否の分かれ目
あとはよくなるだけである
六つの精進
人間くさい経営
第五章 ベンチャーの師と盛和塾
盛和塾とは何か
塾長と塾生のエネルギーの相乗効果
向上する酒の飲み方
中小企業経営者のあらゆる悩みに答える
リーダーは、いかにあるべきか
事業の限界点を、どう超えるか?
「人生と経営」随聞録
悲観しきったホテル経営者の嘆き
利益を上げ、人のために使う
過ちを犯しながら学ぶ
3K職場に誇りを持たせたい
経営者自身が、まず仕事に誇りを
元暴走族が、強力な戦力に
稲盛和夫に学ぶ不況サバイバル
不況はチャンスである
一致した心が窮状を乗り切る
苦しいときほど発想を柔軟に
松下幸之助の不況克服哲学
不況をどう考えるべきか
エピローグ──いまなお実社会の第一線で
人生を三つに分ける
胃癌手術後に出家する
托鉢修行が稲盛を変えた
熱を帯びる「利他行」
おわりに
稲盛和夫・略年譜
中村天風・略年譜